【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第7章 山猫の住処
アッシュが出かけると、スキップが安静にするように言うのでベッドに入った。
医院で飲んだ薬が効いているのか、身体の痛みはほとんど感じない。
「寒いの?マフラーしてるけど」
そばのソファに寝転がってスマホを見つめていたスキップが言った。
「ううん、なんか安心するから」
アッシュにもらったこのマフラーを巻いているとあったかくて、それになんだか安心する。
「ふうん」
わたしの返事に、スキップは意味ありげにニヤッと笑って相槌をうった。
もしかして、アッシュがこれをくれたことを知ってるのかな、と思ってそれを言おうとすると、スキップが先に口を開いた。
「あのさ。俺リサより歳下だし、もしかしたらすげぇ頼りないと思われてるかも知れないけど。これからは困ったりつらいことがあるなら言えよな。何かできることがあるかもしれないだろ」
「うん・・・。スキップ、ごめんね」
「リサ、また謝ってる」
スキップはやれやれと言わんばかりに呆れた顔で笑う。
「うん・・・何も言わなくて余計に心配させてしまったから」
「気にすんなよ。俺がリサでもきっとそうしてた」
スキップにはこれまでのこと、私の口からは話してないけれど、何があったかアッシュが説明してくれたんだろう。
それなのにいつもと変わらず明るく接してくれるスキップに、私は心の底から有難く思った。
「本当にありがとう、スキップ」
じっと見つめてそう言うと、スキップはちょっと照れたように鼻の頭を掻きながら笑う。
「でもこれからは、何かあったら言ってくれなきゃ困るぜ!」
「ん。ちゃんと話すね。お腹空いたとか、何が食べたいとか」
「あはは、食うことばっかじゃん」
「あっ、でもハンバーガーはしばらくやめとこう。アッシュ、あんまり好きじゃないみたいだし」
「言えてる」
そう言ってふたりで笑い合った。