第1章 幕開け
(あ…)
思わず目を見開く。
わたしは、彼を知っている。
ような、気がした。
たまに夢に見るあの幸せなひと時の時間に、この人もいるような気がした。
男はわたしを見つめたまま動かない。
「あなた、海賊…よね?」
「あ、あぁ」
そう言った男の声は間抜けそうだった。
(気のせい…よね)
そう。
おそらく気のせい。
(この男、どうしよう…)
床に倒れた男に目をやる。
こんな倒れ方をしたのだから、政府はわたしがしたとわかるだろう。
わたしの居場所がバレてしまうかもしれない。
そんなこと、させるわけにはいかず、処理をその男に頼み、早足で店を出る。
バタン…
「…綺麗」
雲ひとつない月に、空いっぱいに輝く無数の星を見て、思わず声を漏らす。
こんな空、初めて見た。
吸い込まれそうな暗闇なのに、明るい星たちがわたしを照らす。
「まま…」
目を瞑る。
あのみたくもない光景が脳裏に、鮮明に蘇るーー。