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ドリルの元鞘(R18)

第6章 前・戯


 ボラーからキスをした。

 そっけない、照れ隠しのくちづけ。
 唇の感覚は薄く、軽く、触れる。

 止めてしまえば見つめあう。
 だから、ふたたび触れる。押しつける。体温を感じる。
 睫毛が睫毛をかすめて少しくすぐったい。

 ボラーの両手は[元カノの名前]の頬を包む。
 温かい手。
 そして、長い、長い、長いキスをした。

 仕返しではないけれど、[元カノの名前]はボラーの髪を撫でた。
 さらり。
 すんなりと通る、肌触り。
 さらり。さらり。
 前髪を耳に掛けてあげると、彼の優しい目が露わになった。眉は強い意志を感じるものだけれど、目尻は下がっていて柔らかい。

 触れあう体と体との、温度は同じになる。

 ボラーが微笑む。
 その手は[元カノの名前]の耳を包み、そのまま、うなじへ流れる。
 反対の手で手を繋ぎ。
 唇を首筋に当てる。
 濡れた舌の感触は、波紋のように全身へと広がり、ぞわりとした快さを生んだ。

 肌を伝う指。
 繊細に、丁寧になぞる。
 ぶっきらぼうでいて、本当は思いやりに満ちていて。
 それで、でも……。

「[元カノの名前]」
 ボラーが静かに言う。
 真直ぐに見据えて。
 そして、[元カノの名前]の眉間をぐりぐりとほぐした。
「考えないでいいから。余計なこと」
 額に唇が触れる。

 それから、彼は顔を逸らした。
「ちょっとかっこつけちまったか……」
 小さな声。

 鼓動が大きくなる。
 顔に似合って、頬を染める彼。
 [元カノの名前]は体を寄せ、彼の鼓動をはっきりと感じ取る。
 とくん、とくん。
 知られたくないのか、ボラーは体の位置をずらそうとする。[元カノの名前]は、彼の胸に顔を埋め、その背に腕を回す。
 小さな突起に舌が触れると、体がよじられた。優しく噛んでみると、体がよじられた。指でつまんでも、体はよじられた。それから……[元カノの名前]のお腹に触れているもの。ボラーのそれが熱く硬くなっていくのを、鼓動が打つたびに感じていた。
 彼は紅潮しつつ、少しだけ不機嫌な表情。

 ふたりは互いの顔を見ている。
 彼の手が[元カノの名前]の脚に置かれる。
 指を滑らせて内腿を伝う。
 徐々に、最も敏感な所へ近づく……彼女は見つめあっていられず、しかし、ボラーの片手が顎に触れ、顔を背けられなかった。

 瞳。
 視線は、体を巡り、指先をぴりぴりとさせる。
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