第8章 就・寝
痙攣。
靄がかった意識が晴れてくる。
痙攣。少しずつ弱くなる。
脈動。
ボラーは目をぎゅっと瞑り、呼吸を荒げている。
脈動。少しずつ弱くなる。
ふたりのリズムは違うけれど。
一度だけ同じになり。
そして、またズレていく。
「つらくないか? 体」
「うん。ありがとう」
呼吸が整うと、キス。
何度でもキスをする。
心地よい疲労感。
不意にボラーが[元カノの名前]の首筋を舐める。「ん!」と声が出てしまう。仕返しに、勝ちほこった彼の顔を両手で包み、揉みつくす。
「ほんりゃんほ、ひゃめお~」
情けない彼の声。
ふたりはくすくすと笑った。
――。
丸めたティッシュを袋に捨て、固く縛るボラー。
その後ろ姿。
いつまでも変わらない彼。
一方で……。
「よし、じゃ、寝ますか!」
能天気な声色。
考えても仕方ないことは、考えても仕方ない。
そんなトートロジーで、鬱屈した気持ちに風穴を開けてしまえる彼。
ボラーは貫いてしまう。
きっと、これからも。
そんな彼が折れそうになるときも、いずれは、あるかもしれない。そんなときは……。
「ほらもう寝るぞ! うっわさむ! ちょっと暖取らせて~[元カノの名前]~。よしオッケー離れんなよ! おやすみ!」