第7章 始まる物語
「えぇ…なにそれ、酷い。酷すぎるよ…」
大きな瞳に涙を浮かべて言ってみる。
すると、ナミちゃんはまた口を動かしぺらぺら話す。
(長いな……)
長い。長すぎる。
プラスめっちゃくちゃどうでもいい。
その最低男がどんなのかも全く興味ないし、ナミちゃんがその男にどんな扱いを受けようがめっちゃくちゃどうでもいい。
「それでも、好きなの…」
あぁ、彼女の女の顔を見てしまったと思う。
はじめてみた彼女の顔に、その男がどんなのかみてみたいと急に思った。
ナミちゃんがこんなに股開いても、手に入れられない男を手に入れたいと、遊んでみたいと思った。
平凡なつまらない毎日への、ちょっとした神様からのプレゼントかしら
「今夜9時にあそこの場所で待ち合わせね」
一方的に言って早足に店を出る。
じゃないと、彼女はその男に会わせてくれないだろうから。
夕日がビルの谷間に沈んでいく。
オレンジ色の眩しい光が街を照らす。
光に照らされた道を早足に歩く。
今日も1日が終わろうとしている。
「…つまんないな」
誰に向けた言葉でなく思ったままを声に出してみる。
「……」
もちろん誰からも返事はなく、ただカーカーとカラスの鳴き声が響いた。