第7章 始まる物語
「うぅ…ひなやっぱり好き」
「ナミちゃん…、もうその男と会うのやめなよ」
最低すぎる!と口を尖らせるひなにナミは自嘲気味に笑う。
どうやらナミがやり捨てられた。という話にひながキレたらしい。
「それでも、好きっていったら?」
「へっ?」
ぽかんと口を開けるひなにナミは言う。
「はぁ…。それでも私は彼が好きなのよ」
「ありえないよナミちゃん……もうわかったー」
ひなは思いついたように目を輝かせる。
「わたしがその人にガツンといってやるんだから!」
「ひな?」
ナミの声に無視し、ひなはナミの持つスマホを取り上げる。
そのスマホの画面に表示される文字を読み上げる。
「今日の夜いつもの場所で…」
ひながいい子なのはわかっている。
友達の中でも1番くらい性格が良くて可愛い子だ。
それになにより純粋で下品のかけらすらないひなに、こんなことを話すのは酷だと思っても、ついいってしまった自分に反省する。
ひなは、優しい子だからこういうことをしてくれることは、わかっていた。
わかっていたからひなに相談したのかもしれないとも思う。
半分はそっちだろう。
(でも…)
ローはどう思うだろうか。
ひなはきっとローに怒るだろう。
怒ってくれるだろう。
でも、そしたら私はローに嫌われてしまうのではないか。
(それが1番こわい……)
「あのね、ひな」
「ナミちゃん、今夜9時に”あそこ”で待ち合わせね」
それだけいい、立ち去ったひなにため息をついた。