第5章 幸せになれないマンドゥルゴ
ザブン…
石ころを投げるとそれは一瞬にして見えなくなった。
沈んだのだ。
これがわたしだったら今頃どうなっていたのだろうか。
どうか、幸せになりたい。
わたしの王子様といっしょに。
ローがわたしを探して、追いかけてきてくれるだなんてそんな夢みたいなことを考えてしまう自分にため息をつく。
目を瞑ってみる。
『わたしを選んだら、不幸になるとしても』
(それでも…)
『ローはわたしを選んでくれる…?』
なんでだろう。
こんな言葉言った覚えがないのに、言った気がする。
ローは…
『当たり前だ。不幸になんてさせねぇよ』
そういって、わたしを抱きしめてくれた。
暖かい感触に包まれて幸せだった。
眠る。
胎児のように丸くなって。
泡に包まれて。
外からの刺激を受けないように、守ってくれる。
「ひな」
ふわりと消毒液の香りがした。
懐かしいような、安心するようなその匂い。
心地の良い声が耳元でする。
この暖かい感触はーー。