第5章 10億円強盗殺人事件
体育館近くのベンチでお茶を飲む。
真っ暗な空には複数の星がちらべられている。
恵理香は夜空を見ながら溜息を吐いた。
春風が汗でべたつく身体にあたり気持ちがいい。空気をめいいっぱい吸いながら、壁に凭れ掛かる。
静かな夜。コナンがいないおかげで、殺人も事故も自殺も目にしない。いやおそらく、これから先も目にしないだろう。何故ならば、コナンと言う名の死に神に関わらないからである。
「あの………すみません」
いつの間に目の前にいたのか暗闇に同化して立つ人がいた。その人は全身黒い服装をしており、フードを目深にかぶっていて顔がよく見えないが、この人が男だろうということは声でわかる。
フードの中からは、鋭く光る二つの目があった。
「……」
鼻につくのは微かな血の臭い」
おそらく彼は怪我でもしているのだろう。
だが荒い息遣いに体が動けずにいた。
彼の手が迫り身を固くしたその瞬間、体育館の扉が開きオレンジ色の頭が覗く。
「俺もそこで休ましてくれ」
諸伏の言葉の途中で男は走り出す。2人で振り向いた時には男の姿は、もうどこにも見当たらなかった。
「なんだ?あれ」
「ウチにもわからん」
「あ、そうそう。ニュース見たか?喰い荒らされたような死体が見つかったってやつ」
「ああ見た見た」
「信じられないけどな」
「……うん」
「お前は米花町に住んでんだろ?喰い荒らしがあったのも米花町だし、お前引っ越ししたほうがいいと思う」
「ははは。大丈夫だよ。ウチあんなの信用してないし」
「そうか?」
「でもあの男なんか変だったなあ」
「変って何が」
「うーん、うまくは言えないんだけど………
微かに血の臭いがしてたような?」
恵理香の声に諸伏が顔を顰める。
「一様警察呼んだ方がいいんじゃあ……」
「…………?」
諸伏の言葉の意味がわからないと首を傾ける。
「喰い荒らし野郎よりも居間は、不審者の方が怖いだろ」
「ああなるほどね。でも警察は事件が起きないとなんにもしてくれないんじゃないの?」
「ああ確かに……」
「それに説明するのめんどくさい」
「お前、ほんとめんどくさがりだよな」
呆れながら言う諸伏に恵理香は苦笑いを浮かべた。
「おーい、もうそろそろ始めるぞー!相良ー
諸伏ー」
体育館内から呼ぶ声に諸伏は返事をかえした。
「よし天月、行くか」
「うん」