第4章 大都会暗号マップ事件
「天月ねーちゃん」
聴き慣れた声に視線を下にやると、コナンが可愛く笑う。
「今日はポアロのバイト休みなの?」
私は頷く変わりに微笑んだ。
「ふーん。ボクも一緒にいい?」
「ただの散歩だからコナンくんはつまらないと思いますよ」
「ううん。僕、散歩だーいすき」
「そう。なら一緒に行こうか」
「……うん」
「ねえねえ、天月ねーちゃん」
「ん?」
「連絡先教えて」
「え、私のですか?」
「うん」
困りながら視線を揺らすと不思議そうに首を傾げるコナン。
「もしかしてケータイ持ってない? そんなことないよね? だって蘭姉ちゃんが天月と連絡交換したって言ってたから」
ニコリと笑う彼は、時に鬼にも見える。
「もちろんかまいませんよ」
ここ最近コナンは、私の働いているポアロに足繁く通っている。小学校の終わった後や、学校の始まる前の早朝など。それにこの前は、蘭のケータイを借りて電話までしてきた。
(コナンよ、私は君の身体を小さくした黒の組織とは少しも関わりがないんだよ。頼むからウチに近づいてくんな! この死に神)
「天月ねーちゃん、顔色悪いけど大丈夫?」
「あはは。なんだか少し気分悪くて……」
(全部テメエのせいだよこの野郎)
「大丈夫? 気分が悪いなら今日はもう帰った方がいいんじゃない? ボク、お家まで送るよ」
(こ、こいつ会話の扱い型に慣れてやがる。だがそう問屋がおろさんよ)
「コナンくんありがとう。でも、少し休めば落ち着くから、それよりも私はコナンくんとお話がしたいな」
「う、うん。それじゃあベンチにすわろう。こっち」
(ふん。甘いなコナンくん、これが経験の差というものだよ)
私たちはベンチに腰掛け会話を始める。
どうやらこなんは小学校で色々と苦労しているらしい。その証拠に、コナンの笑みが引き攣っている。まあ確かに17歳が小学1年生の勉強をするなど退屈だろう。
漫画にもそんな描写もあったし。
「たくさんお友達ができるといいですね」
「うん。そうだね」
「ねえ、天月ねーちゃんは新一兄ちゃんがどうなったか知ってる?」
その質問に首を傾けながら答えた。
「すみません。私はニュースあまり見ないので」
「そ、そうなんだ。じゃあいつもは何見てるの?」
「……」
「……?」