第4章 大都会暗号マップ事件
ともかくこの部屋に住んでいた子供は、光線過敏症という病気だったのだろう。
おもちゃ箱の蓋をベットの下に戻した時だった、後ろに異様な気配を感じたのは。
瞬時に何かから距離を取り見たものは、黒い頭巾をかぶった小さな少年だった。少年は俯きかげんで表情を読み取る事はできないが、負のオーラを立ち込ませていて不気味である。
「お前、この家のガキか………、そうか、死んだんだな」
目の前を見据えながら人差し指と中指を立て構える。
少年の顔がゆっくり上がりニタリと口元に笑みを張り付かせた時、結界術を発動する為に印を結ぼうとしたが、背後から両手が伸びてきて引っ張られ壁に背が当たった。
「ぐあっ!」
目の前に頭巾をかぶった少年がすごいスピードで向かってくるので、長細く形成した青白い刀で薙ぎ払うと両肩を強く掴んでいた手が離れた。少年は急な攻撃をくらいたたらを踏む。
左腰から右肩まで斜めに斬り込まれて傷口から黒い蒸気が舞っていた。黒い頭巾の少年が消えたと同時に後ろのドアが閉まる。閉まるドアの音に振り向いた時にはもう遅く、小さな舌打ちをこぼした。この状況はかなりめんどくさい。
ガシガシと頭を掻いて長い息を吐き出す。
恵理香は明かりを全て消し、部屋の真ん中に胡坐をかいて目を閉じた。
翌朝、曽川が恵理香の元へ駆け込むと、彼女はあろう事か、廃屋の玄関のドアに悠々ともたれかかっていた。
「相楽さん! …………て、え?」
「ああ、早かったですね。もう少し遅れると思っていましたが」
正直目が点になった。
「あの、色々質問しても?」
「……どうぞ」
「あなたこの家の部屋に閉じ込められたんじゃなかったの」
「ええ、そうですね。でも、朝方にドアが開いたのでこうして曽川さんを待っていました」
「そ、そう。それなら良かったわ」
「まあ、閉じ込められた瞬間クソめんどくせえと思いましたが」
「あれ、おかしいわね! 私、あなたからのメールを見て飛んで来たんだけど? なんでそんな余裕そうなのよ、なんかむかつくから殴ってもいいかしら」
「やだ」
「まあいいわ、それでここにいる霊は対峙できたの?」
「いいえ。でも、かなり致命傷を負わせましたので放っておけば自然消滅しますよ。まああくまで成仏させたいなら、曽川さんがやられればいいと思いますよ。あの親子は見積もっても3日でしょうね」
「3日…」