第4章 大都会暗号マップ事件
ここは長野県のとある町の外れ。
目の前に立っている廃屋を見ながら溜息を吐き出した。
時刻は夜の9時であり、ここに来るのにかなり時間がかかった。行くのに渋ったのもあるが、なんせ道が複雑で行ったり来たり。しかも、この以来の重要人物である曽川陰陽師が来ず、相良1人だけで向かうという事になったわけだ。
「じゃあ天月さんよろしくね。ちゃんと依頼人には連絡しとくから安心して」
そう言った曽川に怒りを覚える。
回想の中の曽川にストレートをかましながら、愚痴を心の中で言いまくる。
(え、何これ、なにこれえええーッ! めっちゃおかしいんですけど…… おかしいよね? だって普通2人で行動するよね?え? 警察官然り、結界師然り。え、ウチだけなの? マジでウチだけなの!? うわあー。きついきついきつい! だってこれ出るよね? 絶対出るよねえ? 良からぬものが… 霊もだけど。て、これ黄色いテープじゃん、ここで殺人おこなわれてんじゃん!! いやむしろ潜んでるよね?? 殺人犯)
ぞわりと悪寒が走る。
まず外から周り、古民家を眺める。
窓にはカーテンがかかっていて中は見えない。けれどおそらく家具はそのままになっているのだろう。
曽川から聞いた話だと、3年前まで母と子の2人暮らしの親子が住んでいたらしいが、母はちょくちょく見かけるが、子供の姿は一度も見かけなかったようだ。そして子供は行方不明になり母親は自殺。
玄関の前に立ちドアノブを回すが開かない。
どうやら鍵なしでは開かないようだ。侵入できそうな窓もない。一箇所だけ窓が塗り固められている部分もあった。
顎に人差し指を当て考えて、思いついたと鼻で笑う。
右足を一歩後ろに下げて腰を落とし、右手を拳に変え左手の平を右拳に包み、腰を捻り気を貯める。黄色がかった光が渦を巻きドアに拳をつきたてようとしたが、微かに聞こえた音にすんでのとこで手を止めた。
コンコン
それはノックの音だ。
気のせいか。と思いながら自分も再度2度ノックすると、コンコン。中から返事があった。
「…。………え、ええええーッ!!」
あまりの驚きに、二、三歩素早く後ろに下がる。だが気を取り直して、恵理香は肩をすくめピッキングを使い開ける事にした。
気を少し人差し指に出し細く形成して鍵穴に突っ込む。