第3章 小さくなった名探偵
「それで君は、こんな時間まで一体何を?」
(そーらきた)
げんなりしながらめんどくさい質問に淡々と答える。
「はい。私は今日バレーボールをしに帝丹大学に行っていました。アリバイならメンバーに聞けば… 今電話しましょうか?」
「ああ、いやいや、君は犯人じゃないだろうから」
かなり完璧すぎる話し方に圧倒しつつ、ケータイに手をかけようとした恵理香を制する。そんな目暮に鋭い視線をやるが、一瞬の出来事に目暮は気づかない。
鑑識の現場検証も終わり目暮達は聞き込みに行くようだ。自分も帰ろうかと目線を部屋から逸らす途中、本箱の隙間でキラリと何かがきらめいた。
「ん? あれはなんだ!?」
近づきそれを見るとワイヤーのような物が、固定された硬い物に巻き付いていた。
(こっこれは!)
犯人はトリックを使って被害者を殺害した。
さすがは推理漫画の世界。例えこの場に主人公がいなくとも、殺人は健在のようで、笑みを引攣らせる。
「待ってください警部」
刑事達が部屋を出て玄関に向かう時、とっさに呼び止めてしまう。
「……あ」
気づいた時には遅く部屋の外には、なんだ。と言いたげな瞳を向ける目暮。
「あ、いえ、これ」
人差し指を壁と本棚の隙間に向ける。
入れ替わるようにして目暮にその場を譲れば、目暮は本棚と壁の隙間をまじまじと見た。
「ん? なんだね? この針金は」
「もしかしたら針金を使たトリックで被害者を殺害したのでは……? それにこの金属の板何よりの証拠」
「ほお、なるほどなあ、それで犯人はわかったのかね?」
「は」
「は?」
かなり全力の一文字が口から出た。
「なんの事ですか」
「は、犯人がわかったんじゃないのか?そんな顔していただろう」
(いや、どんな顔だよ)
「犯人なんてわかりませんよ。私探偵じゃないんで」
「…………そうなのか! いやいやすまない。君が工藤君のような犯人がわかったときに見せるふてぶてしい顔をしていたからつい」
(だからどんな顔だよ。アニメを見てて思ってたけど、警察がこんなんで大丈夫なの、この世界の警察官にはプライドってもんはないのか?)
「はははは」
(…………この事件、迷宮入りしそー)
そんな失礼な事を思いながら半眼で目暮を見ていた。