第3章 小さくなった名探偵
「警察官だったんですか」
不意に出た言葉に彼は頷く。
「うん。天月ちゃんは………あ、自主?」
「殴りますよ」
半目になりながら言い返す。
「ごめんごめん。冗談だから」
横に座ってきて手元を覗き込む。
「ちょっとやめてくださいよ、住所書いてあるんですから」
「ああ、そっかそっか」
軽く笑う萩原に溜息を吐いた。
書き終えた紙を窓口にいる人に手渡し、ポアロに戻ろうと萩原に会釈をすれば、バイト先まで送る。と言われたので首を横に振る。
「もうすぐで終わるから正面口で待ってて」
ウインクして部屋に入って行く。
彼はかなり強引ではあるまいか?
周りの視線が痛い。しかも女子。
「お待たせー」
「あ、いえ、そんなに待ってませんので」
「それ俺が持つよ」
それ。と言う言葉に萩原の視線を辿ると買い物袋を見て首を振る。
「いえいえ、そこまでしていただくのは申し訳ないです」
「いいから」
ひょいっと取られた荷物を見て礼を言う。
「どういたしまして」
話ししながら歩いているとポアロが見えてきた。
「ああ、ここですここです」
「うん。中まで運ぶよ、あと昼ごはんもここで済ませたいし」
「はい」
この男に何を言っても無駄なことはわかりきった事なので頼る事にした。
「すみません、遅くなりました」
店長に謝りを入れてお客さんを案内する。
食事を待っている間萩原がニッコニッコしていた。食事を運ぶ際一瞬びびった。
お会計をすませる為に立ち上がりレジへ向かう萩原を見て駆け寄った。
「美味しかったよ」
「ありがとうございます」
「じゃあまた夜にね」
ひらひらと手を振る萩原に苦笑いつつ挨拶をした。
「ありがとうございました。またのおこしを」
「おう、待たせたな萩原」
「ん? ああ大丈夫俺も今来たとこだから」
「……お前のそういうとこが」
「7年前死んだ人に似てるんでしょ? えっと……誰だったっけ」
「萩原研二」
「ああ、そうそう。まだひきずってるんだ。でもさあ、死んだのはその人の自業自得だと俺は思うよ」
「お前は案外辛辣だな」
「はっきり言った方がいい事もあるからね」
萩原の向かいに座った男性の年齢は30ぐらいだろう。彼の目元が優しく細められた。
「ほらよ、お前が言ってた7年前と3年前の資料だ」
「へえー、両者とも11月7日にねえ……」