第3章 小さくなった名探偵
両手でボールを強く掴んでいるのか、ミシミシと音がしている。
「相良逃げろー!」
ボールを持っていない方の男性が声を上げた時、静かにボールが中に上がり速攻の玉が相良の顔面に当たった。
「さっ相良ー!」
「あー、やったー」
横で見ていた男性は頭を抱え、仕返しを成功させた男性は晴れやかな顔をしている。
「お前、やりすぎだ!」
「なんで? 仕掛けて来たのはあの子だよ」
心外だと言うように倒れてる人に指を指す。
「彼女は女の子なんだぞ」
「ふーん、じゃあなおさら俺には関係ないね」
減らず口を叩いている男性を引っ張り、身体を起こし顔を抑える相良の前に行く。
「本当にすまない。お前も謝るんだよ!」
横にいる男性の頭を前に押して自分も頭を下げる。
「いえ大丈夫です。まあ、ちょっと痛かったですけど問題ありません」
「でも……」
「ほら、彼女も大丈夫だって言ってるからいいじゃん」
手首を掴み頭から下ろさせる。
「お前は少し反省しろ」
彼から下ろさせられた手を拳に変えて拳骨する。
「痛いよ進ちゃん」
「あ、俺の名前は、夏木進一。こんなタイミングで悪いけどこいつは、萩原光期」
「よろしくー」
手をひらひらと顔の前で振る。
「宜しくお願いします」
頭を下げる相良に萩原は動揺する。
「あれ、もしかしてこの子俺達のチームに?」
「まだ仮だけどな。試合に出れるかわからねえよ」
「ふーん。で、そこの背の大きい君は?」
萩原が背の高い男性を指差す。
「風見裕也です」
「ふーん、風見くんね」
「さっさと試合始めんぞ」
「じゃあ俺は休んでよっ」
「お前っ」
夏木が文句を言おうとした時、日向が駆け寄って来て蹴りを入れる。
「お前も出るんだよ! さっさと着替えて来い」
「はーい」
なんとなくそんなやりとりを見ていると左から声がかかる。
「お前ほんとに大丈夫なのかよ」
「うん。大丈夫」
諸伏は心配そうにしていたが、大丈夫と言う言葉にぱあっと笑顔になる。
「そっか」
へとへとになりながらネット越しの相手を見る。
「おい萩原、相良にばっかり撃つなよ。卑怯だぞ!」
おチビちゃんは黙ってなよ」
笛が鳴りサーブしたボールが入る。風見のトスしたボールが相良の方に向かう。そのボールをまっすぐ見ながら走り飛んでネットの向こう側に撃ち込む。
「よっしゃー!」