第3章 小さくなった名探偵
「ここは社会人バレーだ。俺は、日向宏光。よろしく」
「相良天月です」
お互い名前を名乗り握手を交わす。
日向の横に風見がつく。
「今日は人が足りないから、こっちのコートに入って」
「はい」
「あ、風見さんの得意なポジションは?」
「私はどこでも」
「……うん。じゃあトスを上げてくれるか? 最初は3対3でやる」
「相良風見、よろしくな」
私は頷き風見は浮かない顔をしていた。
相手コートを見ると背の高い人達がいる。さすがは男の人と言ったところか。
「じゃあ相良からサーブ」
飛んできたボールを両手でキャッチしてサーブポジションへ行く。
「相良ー、リラックスリラックスー」
諸伏が声を上げる。
ボールを目の高さまで上げ相手のコートを見る。
試合開始のホイッスルが鳴り、ボールを上に上げてアタックする。回転のかかったボールがネットの上を超え相手コートに入って行く。
試合終盤、3人は特典ボードを見て悔しがっていた。
「2人とも全部ウチにボール回して」
「え」
「絶対入れてやる!」
「よし、わかった。風見もそれでいいよな」
「うん」
ホイッスルが鳴った時、ガラガラッと体育館のドアが開く独特の音が鳴った。
「お待たせー、みんなのエース萩原さんが来ましたよー」
その軽さに全員の空気が静まり返る。
「あれ? みんな元気ないね?」
「ごら、いつもいつも遅刻しやがって!」
「ごめんごめん」
不意に彼と目が合う。
「あのすみません、ボール貸してもらっても?」
「え、ああ」
わたされたボールを斜め上に放り込み、ジャンプサーブしてアタックする。ギュンと音と共にボールは一直線に遅刻した彼の顔面めがけ飛んで行く。
顔面にヒットしたボールが足元で転がる。
「ぷっあははは。よくやった相良」
「ありがとうございます!」
顔面ボールを受けた男の横にいた男性が親指を立てて言う。
その光景に諸伏が腹を抱えて耐えているが、顔がニヤついていて隠しきれていない。
「ははは、顔面ボールいったー。はははっ! 腹いてえ」
ついに耐えきれなくなり笑い始めるが、凄い殺気を感じた諸伏と相良はゆっくり顔を向ける。
睨みつける瞳は血走っていて今にも人を殺しそうだ。
あまりの恐怖に冷や汗が止まらない。
「何あれ、めちゃくちゃ怖いんだけど、相良なんとかしろよ」
「無理無理無理!」