第3章 小さくなった名探偵
「いらっしゃいませー。あ、蘭さんとコナンくんですね。お早うございます。今日は何にいたします?」
「えっとコーヒーとコナン君はどうする?」
「ボ、ボクはオレンジジュース」
「かしこまりました」
蘭とコナンのいるテーブルにコーヒーとオレンジジュースを置いて離れようとすると、服の裾をくいくいと引かれるので振り返る。
「コナン君どうしたの?」
「お姉さんここで働いてたんだね」
「ええまあ」
私はすぐさま離れる。
カウンター越しにコナンの視線が突き刺さり一瞬にして居心地が悪くなる。
視線を辿ってニコリと微笑んだ。
会計が終わって壁を向き深く溜息を吐く。
「どうしたの? 天月お姉さん」
「あれ、コナン君は帰らないんですか?」
「ボク天月お姉さんとお話がしたくて、残っちゃった」
陰りのない笑みで子供らしく笑うコナン君に拍手を送りたい。
私はコナンの目線に合うようにしゃがみこみ聞く。
「何を話しましょうか」
「お姉さんは新一兄ちゃんの事嫌い?」
「どういう事かなあ?
「ボク新一兄ちゃんと知り合いで聞いたんだ。ある女性に嫌われてるかもしれないって」
「コナン君多分それは私ではないと思いますよ。私、新一さんと会ったのはつい最近ですから」
「そ、そうかな? でも」
「私は別に新一さんのこと嫌ってませんよ。ただ他人が怖いだけです」
そう言うとコナンの瞳が揺れる。
「そうなんだ」
「ほらほらコナン君今日は日曜日ですよ。お友達と遊ばなくてもいいんですか?」
「うん。ボクなら大丈夫」
(え、何大丈夫って、全く大丈夫じゃないんですけど……」
「ねえ、なんで他人が怖いの?」
嘘を交えて言った言葉をあっさり聞かれてしまい困り果てる。
コナンという人物は聞きづらい事を聞いてくるふしがあり、それが小学生のいいところかもしれないが、この子が工藤新一と知っている私にとってはうっとおしい事この上なしだ。
内心溜息を吐きながら言う。
「それは言えないかな」
「そっか、わかった」
コナンが店を出るとゆっくり立ち上がり、カウンター席に立ちお客さんを待つ。
ここでバイトしていればいずれ安室に出会うことになる。まあ、黒の組織の幹部だろうと私は一般人。殺す考えには至らないはずだし、実際殺せるとは思えない。人間やめてる奴がいなければの話だが。