第15章 ウォーターセブン 中編
10年前に逃がしたルッチの獲物は、当たり前だが随分と成長していた
肉の乏しい細身の肢体は、それでも完全に「女」のものになっていた
―――壊れた人形みたいだったくせに、随分と人間らしくなってやがる
獲物は仲間と思われる連中と、まともに笑って話していた
面白くないな―――
そう、考えたことにルッチは自分自身で驚いた
獲物がどうであろうと関係ない、どうせ殺す
では、何故そんなことを考えたのか
医務室に運ばれていく女の姿を見送る
真っ青な顔で倒れた女を、すぐに抱きかかえた男
―――トラファルガー・ロー
サイファーポールでも警戒している、最悪の世代のうちの1人
オペオペの実の能力者で、ここ数年で頭角を現してきたルーキーだ
一年前、奴がここに来たときには、女はまだいなかった
『俺が診る!』
あの慌てよう、、、
―――ただの仲間想いの船長か、、、それとも、、
ルッチは、再び無表情のまま口角をあげた
ああそうか、わかったぞ――
先程の答えが出た
10年も待ったんだ、簡単に殺してはつまらん
10年分の利子を、きっちり払ってもらわなければ
まずはあの時のように、壊れた人形らしくしてやろう
そうだ
あの女が人間らしく振る舞っていいのは、ルッチが狩りを楽しむ時だけ
もちろんすぐには殺さない、ギリギリまで生かしてやろう
今までで一番、残酷かつ残忍に、、、だ
死んだほうがマシだと思えるくらい、10年前のことを後悔させてやる
あの蒼い瞳がルッチを見て、狂ったような恐怖と絶望を味わう様を想像する
逃げまどい、許しを請い、泣き叫ぶ姿を―――
全く、舌なめずりしたい気分だ
そんな考えは微塵も表には出さないように、ルッチは我が身の内に渦巻く狂気をしばらく堪能した