第13章 一進一退
医務室のベッドではなく、自分のベッドに運んだのは少しでも寝心地が良い場所で寝かせてやりたい、と思ったからだ
彼女をこんな風にしたのは自分だというのに、矛盾だらけで嫌になる
昨夜主人公を抱いた場所
今は意識のない彼女を、そこへそっと横たえる
彼女の薄くなりすぎた肩は、ローを冷静にさせるのに充分だった
白いシーツの上に力なく投げ出された手足を整えてやると、身体が冷えないように彼女の肩まで寝具を掛けてやる
伏せられた長い睫毛が、青褪めた頬に影を落とし、泣く一歩手前だったのだろうか、、、その睫毛の先が涙で濡れていた
何故、あんな風に言ってしまったのか
自分の不甲斐なさに腹が立った
彼女を責めるのは間違いだとわかっているのに、自分を止められなかった
いつもそうだ、、、、主人公が絡むと自分は冷静でいられない
彼女が自分の意志で俺の傍に居たい、、、と、そう言った時は心が跳ねた
海軍から彼女を取り戻し、再びこの手に抱きしめた時は、目眩にも似た喜びを感じた
胸が苦しくなる程の歓喜など、もう自分には無縁のものだと思っていたのに、、、
この時ローは、自分がいかに主人公に惹かれているかという事実をはっきりと思い知らされた
だが、、、
海軍が去って、ふと冷静になった時
ふつり、ふつりと、ローの中で何かが湧き上がった
―――マタ、ダマサレタイノカ
―――カノジョハ、ウラギリモノナノニ
それはどこからともなく聞こえてくる
彼女への復讐は終えた筈だ―――
そう思ってみても、ローの中でその声が止むことはない
それどころか、その声はどんどん大きくなっていく
―――ナゼ、オレヲウラギッタ?
―――ナゼ、オマエダケイキテイル?
その声は真水に泥水が混じっていくように、ローの気持ちをジワリと濁らせた
10年もの歳月を憎しみで染めてきたのだ
心の奥底で燻ぶっているのは、決して消えることない彼女への疑念
それは呪いのようにローの心にべったりと貼りついている