第12章 矛盾
だが、どうだ
教会に行くと彼女の姿はなかった
代わりにいたのは、主人公を好きだと言っていたあの胸クソ悪い男の父親だけ
しかもソイツは、彼女は既に海軍と共に行ってしまったと言うではないか
昨夜主人公は、ローに見え透いた嘘をついた
海軍からの引き抜きの件は『人違い』だったと
何故そんな嘘を、、、と思ったが、アイツの心は昨夜の地点で既に決まっていたのだ
そして彼女は旅立った
ローには何も、、、
何も言わずに、、、だ
女々しくも今の今まで思い悩んでいた自分に比べ、彼女のこの呆気なさは何だ?
海軍との約束まで、あと丸一日あるにも関わらず、それなりに仲良くしていたシャチ達の出港を見送りにも来ない理由
答えは簡単だ
彼女はなんだかんだと言いつつも、結局は地位と名誉を選んだのだ
昨夜、彼女はあんなに哀しげにローの名前を呼んでいたのに、、、
あの時、彼女とローは切ない程に胸を突き上げる感情を確かに共有していた筈なのに、、、、
どうやら、そう思っていたのはローだけだったらしい
つまるところ、そう、、、、全てはローの勝手な想像でしかなかったのだ
―――とんだ茶番じゃねェか
ローの中で激しい焦燥感と同時に、それ以上の怒りが湧いた
ローはギリギリと奥歯を噛まずにはいられなかった
またアイツに裏切られたのだ――と
正確には、彼女は誰も裏切ってなどいない
しかしローはそう思わずにはいられなかった
あれから10年、、、10年だぞッ!
ローはもう、あの頃みたいな何の力も持たないガキではない
力を手に入れ、大海賊時代をその力だけでのし上がり、今では『死の外科医』と恐れられる程になっている
それなのに、こんなにも容易く、、、、今またローの心を踏みにじろうとしている彼女を、、、
主人公を心から憎いと思った
あの女はまるで魔女のように、再びローの心に呪いを置いていこうとしているのだ