第12章 矛盾
病院長の手が、主人公の肩をポンポンと優しく叩いた
「これでも、君の事を勝手に父親気分で見守ってたつもりだ。近い将来、本当の娘になるかも、、、と、勝手に期待してたのも確かだ。ま、お前さんが息子のアサドに興味がないのはわかってはいたんだがな。」
病院長は笑って言葉を続けた
「放蕩息子が立派に医者になれたのも、君のおかげだし、この辺りの地域の医療技術も格段に進歩したのも君のおかげだ。私の方こそ君に感謝しとるよ。君が困っているなら手を貸すくらい当然だろう。」
だから遠慮なく頼ってくれと、笑顔でそういってくれた病院長に主人公はすぐに言葉を返す事ができなかった
勝手な事を、と文句を言われはしても、まさか感謝されるなんて思ってなかったからだ
何より、、、父親のように見守ってくれていた、という言葉に胸が詰まった
――甘えてもいいのだろうか、、、、
「、、、後の事、よろしくお願いします。」
「必ず約束しよう。」
主人公の言葉に、病院長は力強く頷いてくれた
そして、それと、、、と、付け加えた
「君が帰りたいと思ったなら、いつでも帰っておいで。ここは君の故郷なんだから。」
病院長の顔を見れば、彼は涙ぐんでいた
「、、、ありがとう、、、ございます。」
とても言葉にならなくて、溢れてきそうになる涙を堪える事はもうできなかった
こんな私を最後まで気遣ってくれ、ここが故郷だとまで言ってくれる
主人公は自分に腹が立ち、同時に恥ずかしくなった
自分には幸せを望む権利はないと思っていたが、、、、自分はすでに幸せだったのだ
主人公自身が気が付けなかっただけ、いや、気が付こうとしなかったのだ
自分の罪の重さを嘆いてばかりで、後ろばかりを振り返って、自分の殻に閉じこもって、、、、、本気で自分自身を見つめ直したことがあっただろうか