第12章 矛盾
だから、あんな願いを口にしたのだ
『、ロー、、お、、願い。』
そう言って震える手で袖を捕まれ、心を掻き乱された
純潔を踏みにじられ、何度も陵辱された相手にそんな風に縋らないと生きていけないくらいに、主人公はボロボロに傷ついていたのだ
当初のローの目的通り、まんまと彼女を死にたいと思う程に傷つけ、復讐は成功したのだ
だが、どうだ、、、、
ざまあみろと少しは胸がすくかと思ったが、そんな気分には全くなれず、かえって最悪な気分になっただけだった
思考が絡まり、混乱した
かける言葉は何一つ、見つからなかった
馬鹿みたいに動けずにいたローの袖を、ついには彼女が力なく離した
そして、両手で顔を覆って小さな肩を震わせて泣いた時―――
体が勝手に動いて――
気がつけば、主人公を抱きしめていた
自分が何故そんな事をしているのか、訳がわからなかった
彼女はローの腕の中に収まっても小刻みに身体を震わせていた
何度も抱いた筈なのに、抱きしめたら折れてしまいそうなくらい小さく細い身体だった
どんな思いで主人公がその言葉を、口にしたのか、、、それを考えると胸が握りつぶされたかの様に苦しかった
痛い程に溢れ出すこの感情を、なんと呼ぶのかローは知らない
同情かもしれないし、らしくもない罪悪感かもしれない
しかし、そんなものは今、心底どうだって良かった
ただ、ただ、哀しい腕の中の温もりを、ローは力いっぱい抱きしめた
そして
主人公に触れたい、心からそう思った
今この時だけは、他の誰でもない
ローには主人公でないと駄目だった
――― 主人公が欲しい ―――
もはや彼女の望みではなく、ロー自身の望みだ
もう抱かまいと決めた筈の、理性や自制心などはまったくの無力だった
『嘘でも良いから、恋人みたいに、、、』
あの頃の二人に戻れたならば、、、、
幸せだった、あの日のように、、、、
ローは主人公に、そっと口づけていた
満月の下で誓いあった、狂おしいほどに懐かしい記憶
あの時と同じ彼女の柔らかい唇に、ローの胸はまたチクリと痛んだ