第9章 届かない気持ち
主人公の言葉に、ローはまた眉を顰めた
打って代わって真剣な表情に、怒りは見えない
「お前、、、どういう事かわかってんのかよ、、。」
ローの望むように返事をしたのに、まるで、彼の方が傷ついた顔をしている
そんな彼の表情を見たら、胸がギュッと締め付けられた
ローにとって主人公は、憎むべき相手なのだ
嫌われるのも、苛立ちを向けられるのも当たり前
主人公を奴隷のように扱って、彼の気が少しでも晴れるなら甘んじてそれを受けなければならない
『奴隷』という言葉は抵抗があるが、、、
ようするに、彼の言うとおりにすればいいのだと云う位には理解している
死ぬまで働けと言われるなら、それでもいい
「ええ。、、、ローの言うとおりにするわ。」
静かに答えると、ローは苛立たしげに大きく舌打ちをした
突然に
目の前のローの腕に捕らえられ、強引に引き寄せられる
あまりの勢いに彼に倒れ込む
顔がローの胸にぶつかると、嗅ぎ慣れた消毒液の匂いに交じった、潮の香りがした
そのまま両腕をさらに強く掴まれる
痛みで顔を上げると、そこには明らかな怒気を孕んだローがいた
「お前、、、、ふざけンなよ!」
「ふざけてなんか、、いないわ。」
はっきりと言うと、ピキリと彼のこめかみに青筋がたった
ふざけてなんて、いない
ローの目を真っ直ぐに見た
怒りを押し殺した低い声で、主人公にローが問いかける
「、、、こんな風に、、、されてもかよ?」
ギリギリと強い力で腕を掴まれ、骨が軋んだ
すごく、痛い、、、、
でも、きっと、、、、ローの心はもっと痛い
ローのどこか苦しそうな瞳が、かえって主人公を冷静にさせた
きっとローは主人公のことが、憎くて堪らないのだ
ローの力があれば、きっと私の命なんて簡単に奪える筈なのに、、、
でも、彼はそうはしない
そうされて当然のことを私はしたのに
裏切った女にさえ、この人は酷く優しい
その分、ロー自身が苦しんでるのだ