第9章 届かない気持ち
『お前にとって、あの事は、、、、。きれいさっぱり忘れてやり直せる程度の事だったんだな。』
それは、、、
それは違う、、、
ローの事を忘れたことなんて、1日だってない
声を出して、そう言いたいのに、、、
固まった身体は動いてはくれない
涙だけが、次から次へと溢れてくる
息が触れそうなほどに近いのに、ローの心はこんなにも遠い
主人公の心には今でもローがいる
毎日のように自分の罪を思い出し、その度に胸が切り裂かれる様な痛みを抱えてきた
ローの無事を願い、祈り暮らしてきた
これだけは、紛れようもない真実だ
でも、それが何だと言うのだ、、、
確かに辛い時期もあった
しかし、今の自分はどうだ
この街の人は優しい
身よりもない素性もわからない女が、運良く神父様に拾われ、街に溶け込み、そして医者になった、、、
実際に自分でも恵まれているのだと思うし、傍から見たら幸福に見えるだろう
教会での仕事にも、病院での仕事にも、不満は何一つなかった
彼が先程が言ったように、平和な街でのうのうと暮らしていると、、、そう思われても仕方がない暮らしではないか
きっと彼は望んでいたのだ
目に見えての不幸を
そう、例えば主人公が神父様に拾われたときのような、死を待つだけの身も心もボロボロで惨めな姿、、、、
今の自分がそんな姿だったなら、彼の怒りも少しは違ったのかもしれない
そんな風に、、、、
優しかった彼を、そこまで追い詰めてしまったのは紛れもなく主人公自身だ
改めて、、、自分の罪の重さに膝が震えた
コラソンの死
自分が直接には手を下していなくたって、主人公が原因なのはローの様子を見れば明らかだ
ローの憎しみ、悲しみ、怒り、、、、
コラソンの死も、彼にその苦しみを与えてしまったのも、、、全て主人公のせいだ
唇が震える
いや、全身震えているのかもしれない
10年前の、あまりにも愚かで浅はかな嘘
ローは今でも苦しんでいるのだ
涙がいく筋も頬を伝った
自分でも知らない内に、声を出していた
「、、、、私に、、できる事なら、何でもするわ、、、。」