第9章 届かない気持ち
気を取り直して、、、そっとローの手をとった
「この傷、どうしたの?」
医師として、どうやってできた傷なのかは重要な質問だ
刃物で傷ついたのか、獣に噛まれたのかでは処置の具合も違ってくる
「、、、、、。」
それはローも充分にわかってる筈だが、ローは何も答えない
答える気は、、、ないらしい
通常の処置で良い、ということだろうか
ローの手をとったまま、反対側の手で抉れた皮膚の中まで消毒液を塗る
縫う程ではないが、手の甲が数センチざっくりと切れているようだ
この傷は、、、、もしかして、、
「誰かを、、殴った傷なの、、、?」
問えば今度は、ぶっきらぼうに返事が返ってきた
「、、、、酒場でムカつく奴らがいたんでな、、、。」
喧嘩、、、したんだ
「他に怪我は?」
「ねェよ、、、。誰だと思ってる。」
喧嘩はともかく、ローには手の傷以外に特に目につく外傷はなさそうだった
相手の事は、とても、とても気の毒だとは思ったけれど、、、ローに怪我がなくて良かった
「よかった、、、。」
ホっとして、思わず頬が緩んだら、ローが、また舌打ちをした
処置が遅いと思われているのかもしれない
そう思われてもいいわ、、、
もう少しだけ、、、、
主人公はゆっくりと時間をかけて包帯を巻いた
昔もこうやって、、、ローと包帯の巻き方を練習したっけ
その時だって、ローの手に触れるのに随分とドキドキしたものだ
だから、なかなか上手く包帯が巻けなくて、、、、
何も知らないローは、そんな主人公をどんくさいと言って笑っていた
幸せだった
あの頃より、ずっとずっと大きくなったローの手
長くて細い指だけど、しっかりと骨ばっていて、ちゃんと男の人の手だった
タトゥーには少し驚いてしまったけど
包帯を巻き終え、最後はその端を二股に切って邪魔にならないようきれいに括った
ああ、、、、必要な処置も終わってしまった
「できたわ、、、、。」
その事を寂しいと思いながら、主人公は触れていたローのその手を名残惜しそうにそっと離した