第8章 憎しみの形
自分のせいで通夜みたいになった食卓を後にし、ローは早々に私室に戻った
今日のローの機嫌の悪さといったらここ最近で一番なもんだから、一緒に食卓を囲むクルー達は気が気じゃない
これでようやく食事が喉を通る
二人と一匹がホッとしたのは言うまでもない
一方、その原因を作ったローは私室に戻るなりドサリと大椅子に腰を掛けた
盛大なため息とともに、天井を仰ぎ見る
疲れた、、、
理由はわかっている
アイツに会ったからだ
島に辿り着けたのはツイてると思ったが、全くもってツイていなかったようだ
フーっと大きなため息が、自然と溢れる
なんという偶然なのか、彼女を、、、主人公を10年ぶりに目にした
ローの中で幼いままで止まっていた記憶の中の主人公
彼女は驚く程に女性らしく成長していた
長年ローの心を蝕んでいる悪魔のような女
あれほど憎悪の焔を燃やしたのに
彼女を見た瞬間、自分でも驚く位に彼女に対して、痛めつけてやろうとか傷つけてやろう等の感情は湧き上がらなかった
しかし、彼女はローを見て涙を流した
彼女になんの涙かと問えば、彼女は小さく謝罪し、そして震えた
大太刀を持った俺が恐ろしかったのか、、、、
彼女の涙を見た途端、不覚にも動揺してしまった
そして、酷く不快な気持ちになった
彼女の瞳には、野蛮な復讐者に見えていたのかもしれない
ザラつく気持ちを抑え、質問した
(ここで、医師をしているというのはお前か?)
(ええ、、、。ここで、医者をしているわ)
昔と変わらぬ美しい蒼い瞳
その瞳を不安げに揺らしながら、彼女はそう言った
それを聞いた時も、湧き上がる感情は怒りでもなく蔑みでもなかった
平和そうなこの街で、きっと彼女は頼れる医師として働いているのだろう
そんな想像が容易くできた
夢が叶えられたんだな、と喉元まで出かかった言葉に自分自身で驚いた
俺は、彼女を憎んでいる筈なのに、、、
そうだ、俺は彼女を憎んでいる
目の前で小さく震えるこの女に、10年前に手酷く裏切られたことを思い出せ