第8章 憎しみの形
視界からロー以外の全てのものが消え去り、、、
主人公は瞬きさえ忘れて、目の前の彼をただただ見つめた
主人公の記憶の中では、ローは今だに幼い子供の頃のまま止まっている
しかし現実の、目の前の彼は想像以上に逞しく大人へと成長していた
顔つきも体つきも、幼かったあの頃とは見違える程に男性らしく成長している
10年前、主人公よりひと回り大きい位だった身長は今では距離があっても見上げるほどに高くなり、服の上からでもわかる、かなり鍛え上げられているであろう筋肉は珀鉛病はおろか病気の片鱗は全く見られない程に健康そうだ
その事に心から喜びつつも、以前と違うのは彼が纏うその空気
どこか荒んだ気配を漂わせている
言うなれば目だ、、、
昔から目つきは決して良いとは言えなかったが、こんなに鋭く目だけで人を射殺せるような、ローはそんな目つきではなかった
美しい景色を見た時、夢を語るとき、何より主人公と過ごす時、鳶色の目がフッと瞬間に柔らかくなる
そんな彼の瞳が大好きだった
今の彼の瞳の奥に宿るのは、底知れぬ闇
その中に野望や憎悪が見え隠れしている
それに、、、きっとよく眠れていないのであろう、、、
目の下の隈とその暗い瞳が彼が現在、平穏な暮らしとは程遠い位置にいる事を否が応でも教えてくれる
ロー、、、、
「、、、、、、。」
言いようのない胸の痛みに体は震え、次の言葉を紡ぐことなんてできなかった
「一体それは、何の涙だ?」
その嘲るような言葉が、再会して二言目に言われた言葉だった
吐き捨てるように言われ、ハッと我に返る
慌てて、ゴシゴシと涙を拭う
そうだ、、、、
私は泣く資格さえ持っていない
例え歓喜の涙であっても、ローの前で泣くなんて間違っている
「、、、ごめんなさい、、、。」
裏切った女に会った瞬間泣かれるなんて、きっと不愉快極まりないだろう
消え入りたいほどの失態に小さく謝ると、彼は案の定、不快感を露わにした
「ここで、医師をしているというのはお前か?」
なんで知っているの、、?
どうしてここにいるの、、?
そう言いたいのに、、、そのどれもが喉に蓋をされたように出てこなかった