第2章 山姥切国広の場合
単に私の初期刀だったから。
言葉は少ないしぶっきらぼうだけど、真面目で頼れるから。
どの真実を口にしたところで、思いつめている山姥切さんに届く言葉になるとは思えなかった。
焦りの色が胸の内をじわじわとせり上がって来る。
同時に、無自覚にここまで追い詰めてしまっていた事に対し、どう謝れば良いのかもわからず、
気が付けば私は涙を流してしまっていた。
違う。
きっと泣きたい気分なのは山姥切さんの方なのに。
そう思っても涙は止まってくれない。
ふと顔を上げると、山姥切さんがぎょっとした表情でこちらを見つめていた。
「な・・・なんであんたが泣く・・・」
その声は動揺している。
「ごめ・・・ごめんなさい・・・でも、聞いて・・・」
涙を袖で拭いながら、私は一気にまくしたてる。
「私は、山姥切さんが私の初期刀になってくれて、とても頼もしいって思ってる。内番だって手は抜かないの、知ってる。戦だって、いつも勇敢に戦ってくれてる。」
山姥切さんが何か口をはさみかけているけど、お構いなしに私は続けた。
「山姥切さんは、写しなのがコンプレックスなのはわかるよ。でも私にはわからない。こんなに私に真面目に付き従ってくれる山姥切さんの存在は、私をいつも支えてくれてる!私は、それが嬉しくて、山姥切さんがそんなに悩んでいるのを気付きもしなかった」
次の沈黙になる前に、涙声の私は言葉を続けた。
「ごめんなさい」
言葉と同時に、涙が一つ、頬へ伝う。