第2章 山姥切国広の場合
部屋の中で、机を挟み私と山姥切さんは見つめ合っていた。
彼が私に話があると言い、私はそれに応じてこうして一対一で話す機会を設けた
・・・はいいんだけど、一向に話が始まる雰囲気ではない。
予め用意して置いた緑茶はとうに冷め、正座をしていた私の足がびりびりと痺れ出す。
「あの・・・」
沈黙に耐えかねた私の第一声は枯れた声だった。
「・・・あんたに、言いたい事がある」
真っ直ぐな言葉とその瞳に、私は身構えた。
怒っているような、不満があるような様子。
山姥切さんはいつも頭から布を被っているから、はっきりとした表情が見えない。
その所為か、あまり誰とも関わりたくないかのような印象を受けた。
その反面で、兄弟刀である堀川君や山伏さんとはよく一緒に居るので正直な所、そこに私が干渉していいのか判らずに、彼に興味はありつつも、何となく心の距離を置きがちだった。
「な、なんでしょう・・・か・・・?」
「正直に聞く。あんた、写しの俺をどう思う?」
「え・・・」
「この本丸には名だたる名刀ばかり。その中に写しの俺がいる事について、だ」
「は・・・はぁ・・・」
「何故・・・俺を近侍にする」
「え」
「写しの俺よりもあんたの近侍に相応しいのが沢山いるのに・・・何故、俺なんだ。俺の事を晒しものにでもしている気か?」
「え、そ、そんな訳ないです」
思いもよらない山姥切りさんの言葉に私は言葉が詰まる。
そんな事・・・考えた事が無かった。