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虎の姉は猫となるか

第1章 探偵社


「ふーん? なるほど、なるほど」

呆然とした様子で私を抱っこしている国木田の横から、キャスケット帽をかぶった小柄な男性が覗き込んでくる。先ほど私を拾おうとした人物だ。
抱き方がぎこちなくて居心地が悪いけど、体勢を整えてその視線を受け止めるとなんだかおもちゃを見つけたような表情になった。
何、この子……。思わずまじまじと見ていたらにんまりと笑ったまま、何も言わずにぽんっと国木田の肩を叩いてがんばりたまえと言って去っていく。

「あ、おい!」
「だいじょうぶ、ちゃんと約束の時間には戻って来るよー」

ひらりと手を振ってキャスケット帽をかぶった彼は去って行き、私はソファで寛いでいた細身の女性の膝に投げ出された。
もちろん、今は猫だからくるりと一回転して彼女の横に綺麗に着地してみせたけど、頭を抱えた国木田はそれどころではないらしい。

「おやおや、妾に投げつけるなんて酷いねぇ。せめてそっと降ろしておやりよ」

着地した私を愉しげに見やり、毛並みを確認するように撫でながら言う女性は楽しげだ。怪我をしたらしたで私が治してあげるけどねという言葉に、医者だろうかと首を傾げる。
まだ約束の時間は来ていないのだろう、集まっている人たちはさっき出て行った彼とこの女性、国木田しかいない。まだ他に居るんだろうか?
ひとまず私は連れて行って貰えるはずなので、大人しく彼女の横で丸くなるとピタリと背を彼女の身体に付けて動いたら判る様にしてからうとうとと転寝をすることにした。
出来れば、今夜は敦が変化しないようにと切実に願いながら……。
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