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虎の姉は猫となるか

第1章 探偵社


とはいえ、横浜に伝手があるわけでもなく到着後に衣食住の確保をするため、弟と一旦離れたのが悪かった。
弟の内にあるアレはその空腹に耐えかねこの街でも出てしまった……。

「……そりゃ、災難だったね」
「それで小僧。殺されかけた、というのは?」

私が思考の海に沈んでいる間に、話はこの街に移動してからのことになっていた。
弟がどこでアレを見たのか、アレを見れるはずもないのにと私も興味を持って弟を見れば、どうやら河川敷に捨ててあった鏡に映ったらしい。
どういうことか……分からないけれどその話を聞いた男たちの目がキラリと光った気がした。
内一人は明らかに獲物を見つけた、そんな雰囲気で弟に提案をしている。

「報酬出るよ?」
「……っ」
「国木田君は社に戻ってこの紙を社長に」
「おい、二人で捕まえる気か? まずは情報の裏を取って……」
「いいから」

私を無視するように話が進んでいくけれど、基本的に私は弟のやりたいという気持ちを止める気はない。
それがどんな結末を迎えるにしても、例え弟の命が脅かされる物であっても、弟が決めた道ならばそれで良いと思っているから。
出来る限り危険から遠ざけたいけれど、それをすることで弟の成長を止めることは本意ではないからだ。
暫くして、話はまとまったようだった。弟が私を窺うようにチラリと見下してくる。

「あ、あの……姉さん?」
「ん?」
「その……僕、勝手に決めちゃって……」
「いいのよ、いつも言ってるでしょ? 貴方がやりたいことに反対はしないって。ただし……」
「どんなことがあっても傍に居る?」
「そういうことよ」
「うん」

話が決まってから、口を挟まなかった私の反応を心配している弟の様子に内心で苦笑しながらも表情は変えないで見返せば、申し訳なさそうな表情で告げてくる。
それに微笑んで返して、常々言い聞かせていることを途中まで告げれば、後を引き継いで弟が口にした。
そう、どんなことがあっても傍に居る。アレが私を私として認識して傷つけないように、私も必要以上に弟を傷つけたくないのだから……。
私の了承にホッとした様に笑った弟の少し高い頭をくしゃくしゃと撫でてやると、目の前に座っていた男たちは私に興味はないのだろう名前を聞いたりすることもなく行動を開始した。
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