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小鹿の隠れ家

第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)


佳乃子が知る温もりは、母親の優しい手や抱擁と父親の本当にごくごく稀に伸ばされる魔の手だけである。
そう、父親のは佳乃子にとっては魔の手なのだ。自分から触れようと伸ばすことはまずない。
よって目の前にあるこんのすけの毛並みは何を置いても触れてもふりたい一品にしか見えないのである。
思わずがっつり食いついた佳乃子はこんのすけの返事もろくに聞かずにバロンを片手にこんのすけに飛び付くとその首元に顔を埋めて背後に回した手で尻尾を掴み撫で回し始める。
当然ながら、佳乃子の容姿や最初の言動、行動とのギャップについていかない頭で固まってしまったこんのすけは逃げそこなってしまいその場所以上に響くだろう悲鳴を上げた。

「な、何事だいっ?!」
「ひっ、ひぃっ、み、みつたださまっ、た、たすけっ! ふぎゃあぁぁっ!!」
「こんのすけ君っ?!」
「ひっ?!」

響いた悲鳴に駆け付けた誰かがこんのすけに圧し掛かっていた黒猫らしき物体を持ち上げるのと、聞き慣れない男性の声に佳乃子が顔を上げたのは同時だった。
普段ある黒猫のぬいぐるみという盾もなく、真正面からまともに顔を合わせてしまった佳乃子は声にならない悲鳴を上げて逃げるという思考を持つ間もなく意識を手放した。
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