第7章 年中行事〜バレンタイン〜
翌日
バレンタイン当日の今日、朝から支部のみんなにバレンタインのお菓子を振舞った。遊真君は初めてのバレンタインに目を輝かせて喜び、陽太郎も沢山のお菓子に飛び上がらんばかりに喜んだ。
「小南はクッキー、宇佐美はパウンドケーキ、雨取はトリュフ、藤咲はザッハトルテか」
「正解ですレイジさん。初めて作ったのでちょっと大変でした」
やはりレイジさんはよく知っている。ただのチョコレートケーキだと思っていたみんなの頭に?が浮かんでいる。
「ザッハトルテは、チョコレートスポンジケーキにチョコレートやクリームを混ぜて溶かしたものを掛けて整形したもので、チョコレートケーキの王様とも言われてるんだよ」
「チョコレートケーキの王様!凄いなザッハトルテ!」
「甘いのとビターなのを用意してるから好きなの食べてね」
遊真君が更に目を輝かせて甘い方のザッハトルテを頬張る。するとすぐに目を見開いて「うまい!」と叫んだ。
それに続いてみんなもお菓子を食べ始める。桐絵達のお菓子も凄く美味しくて、食べるのが本当に幸せだ。
午後、本部にてお世話になってるみんなにケーキを配りに行く。まずは会議室へ。
「失礼します」
「明希か。どうした?」
そこに居たのは忍田さんと沢村さんだけ。2人とも少々忙しそうだ。
「お二人に差し入れを持ってきたんですけど...忙しいなら後にしましょうか?」
「いや、大丈夫だ。丁度少し休もうと思っていた所でな」
「なら良かったです。あ、沢村さんも用意してるんですよね?お先にどうぞ」
「あ、うん。ありがとう」
沢村君まで?と不思議気な忍田さんは本当に鈍いよねと思う。
「ほら、今日はバレンタインじゃないですか。最近は好きな人以外にも、お世話になってる人とか友達にもあげる風習があるんですよ」
「あぁ、なるほど。それでか」
「あの、その、お口に合うかわかりませんが...どうぞ」
「ありがとう」
でたー、忍田さんの無自覚スマイル。こういう時のその笑顔はホント狡いよね。と沢村さんを見れば顔を真っ赤に染めていた。
「じゃあ、僕からも渡しておきますね。2人でゆっくり食べてくださいね」
お邪魔しました〜と邪魔者はさっさと退散し、この場には居なかった城戸さんや唐沢さん達にも持って行く。
みんな普段見ないような笑みで「ありがとう」と言ってくれた。大人の余裕って凄いなぁ。