第2章 年中行事~ハロウィン~
『トリック・オア・トリート!』
「はい、お菓子どうぞ~♪」
今日は年に一度の楽しいハロウィン。
今は玉狛支部にて、陽太郎君と遊真君、千佳ちゃんの3人にお菓子を渡しているところだ。
「3人とも可愛い仮装だね。流石レイジさん」
陽太郎君はオバケ、遊真君はミイラ男、千佳ちゃんは魔女の仮装をしている。どれもレイジさんの手作りで、サイズも3人にピッタリだ。着ている本人たちは褒められて満更でもない様子。
「オサムも来いよ。お菓子が待ってるぞ?」
3人に交ざらず少し離れた場所から眺めていた修君に、遊真君が声をかける。ちゃんと仮装してはいるものの、少々恥ずかしいようだ。因みに衣装はドラキュラである。
「ぼ、僕は...その...」
「お祭り事は楽しんでこそだよ!修君も少しくらい、はしゃいでもいいんじゃない?」
修君は少し戸惑いながらも「はい」と返事をし、今日だけ有効な魔法の言葉を口にする。
「と...トリック・オア・トリート...です」
「良くできました!はい、修君もどうぞ~♪」
遊真君達と同じお菓子の包みを手渡し、修君の頭を撫でる。照れて少々赤くなる後輩って本当に可愛い。
「明希先輩は仮装しないんですか?」
「僕?僕はしないよ~。僕がやっても似合わないしね」
「ウーム、オサムだけでなくアキ先輩も自己評価が低いのか」
「そうなんだよ~。明希の自己評価の低さには困ってるんだよね~」
突然声がして振り替えると、そこには狼男姿の悠一がいた。
「「迅さん!/ジン!」」
「悠一」
手をヒラヒラさせて僕の隣に並ぶ。
「悠一も仮装したんだ。似合ってるよ」
「ありがとね。でもこれ、宇佐美がトリガー弄っただけなんだよな~」
「栞ちゃんが?面白いこと好きだね~」
「そう言えば、さっきアキ先輩のトリガーも栞ちゃんが持ってたぞ」
「え!?」
ふと、嫌な未来が脳裏を過る。
「ま、まさか...」
「そのまさかだ。逃げてもトリガー起動させられるって俺のSE言ってる」
「...全力で覆させるよ」
「それは無理だな。何たって、そこのちびっこたちが俺達の味方に付くんだから」
遊真君達を見れば...と言うより、見なくてもドキドキワクワクといった「楽しみ」がひしひしと伝わってくる。
(あ、これ無理だ。逃げれない)
全てを察した僕は、せめて衣装が可愛い路線じゃない事を切に願った。