第1章 休日ネタ
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「寒い」
いいとこの和菓子屋からの帰り。雪が降るほどではないが寒い日が続く今日この頃。寒さのせいで首をすぼめて1人愚痴る。
「明希ってばホント寒がりね。今日はまだ暖かい方よ」
一緒に来ていた桐絵と栞はそこまで寒くないようだ。
「寒いもんは寒いの~。えい」
「冷たっ!何でこんなに冷たいのよ!」
冷えきった僕の両手を桐絵の頬に当てると、めちゃくちゃ驚かれた。僕の手は冬になると物凄く冷える。末端冷え性と言うやつだ。
「明希ちゃん、爪が紫だよ~。急いで帰ろう」
2人の暖かい手が僕の冷たい手を繋いでくれる。2人の優しさに僕の心が暖まった。
支部へ戻りリビングへ行けば、レイジさんが暖かいココアを淹れて迎えてくれた。
「3人ともお帰り。冷えてるだろ、ココア淹れてあるぞ」
「「「ありがとうございま~す!」」」
桐絵と栞が並んでソファに座り、僕は反対側に座る。
レイジさん特性の暖かいココアと部屋の暖房で、冷えきった体がだんだん暖かくなってきた。
3人で女子トークに花を咲かせていると、賑やかさにつられたのか悠一と京介がやって来た。
「よ、3人とも楽しそうだな」
「何の話してるんすか?」
「女子トークの内容は話せないよ!想像に任せるぜ!」
栞がメガネをクイッと持ち上げてそう言う。
「悠一、頼まれてた和菓子買ってきたよ」
「お、ありがとな。久し振りにこれが食べたかったんだよ~」
「先輩、俺にはないんすか?」
「...よかったら僕の1つ食べる?」
「遠慮なく」
京介は本当に遠慮なく僕のお菓子を貰う気のようだ。まぁいいんだけどね。
「明希先輩」
「ん?どうしたの?」
「食べさせてください」
「いいよ~」
食べさせて欲しいって、京介も可愛いとこあるなぁ。周りが驚いているのに気付かず、自身のお菓子を京介の口に運ぶ。
「はい、あーん」
「ん...うまいっす」
「でしょ~♪このお菓子美味しいんだよ!」
「明希先輩のお菓子って外れがないっすよね。今度俺も行っていいっすか?」
「勿論!一緒に行こう!」
「アザっす」
京介は随分とこのお菓子が気に入ったようだ。気に入ってもらえてよかった。
このあと悠一が「俺にもして」とごねたため、仕方なく食べさせてあげる。
そして何故か僕も食べさせられた。自分で食べれるんだけどなぁ。