第1章 家
本当に家が焼けていた。
屋根も骨組みも全部崩壊して、見る影も形も残っていない。見るも無残な光景が広がっていた。
昨日朝まであった、目立つ赤い屋根は、真っ黒に変形し、赤だったかどうかさえ、もう分からない。
柱が数本だけ残っているけれど、いつ倒れてもおかしくない。
それでも、何か残っているかもしれない、と焼け跡になった瓦礫の中を分け入った。
「何か、何か、あるはず……」
服が入った箪笥や、押入れの中にしまい込んだアルバム、写真立て、などを思い出し、焦げた机や椅子を必死に退けて探し続けた。
いくら探しても何もない。全部真っ黒焦げで、ぼろぼろと砕け散る。
涙がこみ上げていた。自分の大事な物が全部、消えている。
「………無い……ほんとうに無い」
どれくらい探していたか分からない。無我夢中でずっと、私は手を動かしていた。
最後に、箪笥の中を開けた。
「……全部真っ黒焦げ……」
小さく笑った。
思い出は残っていない。皆真っ黒。
だけど、一番の思い出はこの家。
私が地震の怪我で入院中に父が、サプライズで作った家だった。
5歳の私は赤い屋根のオモチャのお家を使っていつもお人形遊びをしていた。退院の時に、父が笑顔で連れて来てくれたのがこのお家。
木ノ葉隠れ里の人達が家をつくるのに手伝ってくれたって言っていた。
大切な大切な家だった。