第1章 家
「ーーとりあえず、焼けた家に向かうね。何かあるかもしれないし……」
居心地悪い雰囲気の中で、声を出した。いや、混乱しながら頭を整理出来ないまま喋っていた。
「ーーお前、オレの家知らないだろ。仕方ない。行くわ、一緒に」
「あ、カカシ、あのね、いいの?私が住んで迷惑じゃない?」
「……火影命令だから仕方ない」
きっぱり言われて、少し落ち込んだ。火影命令じゃなかったら、ダメなんだよね。私が泊まったら……。
とぼとぼ歩きながらカカシを見た。狐面を頭に乗せて平然と歩いている。私なんか興味無いよね。
ずっと幼い頃から一緒だったけど、
あの可愛かった笑顔が消えてしまったのは、いつの頃だっけな……。
自分の思い出の中を探りながら考えてみたけど、選ぶ事が出来ないほど、カカシには幾度も、悲しい出来事が襲いかかる。
父を亡くし、友人を亡くし、師を亡くし、カカシはもう、大切な人が居なくなっている。
暗部で無我夢中に任務を遂行している姿を、私は横から眺めるしか出来なくて、何か声をかければ良いんだけど、気の利いた言葉が見つからなかった。
日々困憊しながら働くカカシは、生きる気力すら、最近は無くしてしまったんじゃないか、なんて考えてしまう。
暗部で働けど、面をとり、休日を過ごせば、普通の忍と変わりはしない。
私も兎面を取って、一歩外に出れば普通の忍だ。友人もいるし、恩師もいる。ただ父がいないだけ。他所から来ただけ。
ただ、ただ、幼馴染のカカシが、笑顔になるにはどんな術があるのかと、悩んだ日々を過ごしていた。