第1章 家
「やっぱり何にも残っていないのか?」
後ろから声が聞こえて、はっと意識が戻った。
カカシがいた事を、私はすっかり忘れていた。
「あ!ごめんね、カカシ!」
何故、声をかけてこなかったんだろう。言えばいいのに。早くしろよって。
振り返って、カカシの方へ駆け寄った。
少し離れた場所で、両手をポケットに入れて、少し斜めに傾けて立っていた。
「あ、はは!ごめんね?夢中でカカシをすっかり存在忘れちゃってた」
だははは、と笑ったけど、カカシは少しも、笑わない。
「ーーでしょうね、そんな感じだった」
淡々と答えるカカシ。少し寂しい。何かリアクションしてくれたら良いのに。でも今日のカカシは文句を言わない。不思議だ。
私が作業を終えるまで
カカシは黙って待っていた。
「ありがとう、カカシ、待ってくれてたんだね。」
素直にカカシに感謝を伝えて私は横を並んで歩いた。
「気にしなくていい。別に苦じゃない」
「うん、ありがとう」
優しい気遣いをしてくれて、私は気持ちが暖かくなっていた。