第10章 闇 希望
シュッ!
鋭く光る銀のクナイが、頬をかすめた。ザクッと肌を切る音と、ともにパックンが叫ぶ。
「花奏! よけろ!」
ガガガガガ!
壁や床に、次々とクナイが突き刺さる。避けた拍子に、机が動き、コップが音を立てて割れる。 椅子が斜めに傾いた。
「っ、!」
真正面にきたクナイを、反らして、バク転で距離を取る。自分の反応が遅い。情けない。一般人みたいだ。
頬からだらりと、血が流れ、ジャージは破れ、ズボンから肌が露出する。あー最悪、今日買ったばかりなのに。
「……パックン、すぐに応援を呼んできて!」
言った瞬間、
膝に手をついて屈んだ。
ダメだ。チャクラもない、体力もない。
たぶん、
長く引き止めれない。
「はぁ、………はぁ……」
攻撃をかわしただけだ。それなのに私は、全力疾走したように、息を切らした。
ドアを開けた、見慣れた男が、
笑みを浮かべる。
「花奏……大丈夫か!?」
パックンが近くに寄って、
私を覗き込む。
汗がびっしょり
吹き出た顔を見られてしまった。
平気だって
演技しなきゃいけないのに、
ダメだ。
いま、笑う余裕すらない。
「……大丈夫…」
……じゃない。
ぜんぜん動けない。
身体がいつもみたいに、うまく反応できない。重石を全身につけたみたいに、身体が重い。
「花奏ちゃんって、いつも俺の演技に騙されるね。 カカシなわけないじゃん。 バカだね」
クスクス、楽しそうに笑う声が聞こえた。
いつも近くにいた
幼馴染の声。
優しくてあたたかい。
裏切り者の声 。