第10章 闇 希望
私の名を何度も呼んで、汗ばんでイク姿が、色っぽくて、思い出すだけで、ドキドキした。
手を振って頭に浮かぶ
カカシを消した。
やだ、なに考えてんの?
意味わかんない。
「花奏、だいじょうぶか? 顔が赤いぞ?」
パックンが私を見て、顔を傾ける。
「あああ、ああかくないよ!シャ、シャワー浴びてくる!」
指摘されて、さらに焦った。
なんで?カカシが頭から離れない。
さらに耳まで熱くなり、隠すように、私はバスルームへと、裸のまま小走りした。
あー変だ。
媚薬がまだ切れてないのかな……。
パーカーとジャージ、そして、スーパーで買った、新しい下着を、脱衣所のカゴに置いて、ふと目に入った。
「た、大量……」
もうひとつのカゴを見た。汚れた任服が山のよう。
洗濯しなきゃ……。洗濯機の蓋を開けて、次々と突っ込んだ。カカシのズボンを掴んだときだ。
あ、ポケットの中、確認しなきゃ。ごそごそと、任服の中を探した。なーーんも入ってない。つまらない。
面白くない、抜け目がない。洗濯機のなかに入れて、私の任服のポケットに手を突っ込んだ。
いろいろ出てくる。めちゃくちゃある。まず刀。巻物、クナイ、小銭入れの財布、ティッシュ、ハンカチ、メモ帳、ペン、のど飴。洗面所の棚に置いた。あ、まだある。
スーパーのレシート、紙くず、
これはゴミ箱だ。ぽいっと捨てた。
ふと、硬いものに触れ、ポケットから取り出した。
ヤナギからもらった、キャップがついたクナイ。
''いつも肌身離さず、持ち歩いて欲しいんだ"
私は、ヤナギの言葉を思い出し、ジャージの中へ入れた。洗濯機の電源をつけて、朝動くように予約した。もう夜だし、ご近所迷惑だもん。ついでに乾燥機能もセットした。これでバッチリ。
バスルームに入り、シャワーの蛇口をひねった。あたたかいお湯が気持ちよくて、ホッとする。
こぽこぽ、排水口に流れてゆく お湯を眺めた。
どこか、私は過信した部分があったのだろう。 そのせいで、私はカカシに迷惑をかけた。
警戒心が足りなかった。
注意が足りなかった。
人に甘え、隙を作り、油断した部分が、
どこかにあったのだろう。
次はない。
私は、シャワーを止めても、
暗い排水口を、黙って見ていた。