第29章 始まり
「うん、いい」
「サスケくぅうん!!!おはよーー!!」
「よ」と言う前に私は横に吹っ飛ぶ。ぎゅうと腕に抱きついて話しかけてきたのは、そう。ピンク髪のサクラちゃんで。目がキラッキラに輝いて今日も可愛い。いや瞳は獲物を狙うハンターのようにギラギラで。
「おはようサスケくん!アカデミーいっしょに行こうよ!ね!」
「……いや、もう着くだろ」
全身からハートが飛んでいるサクラちゃんとは対照的で、ポッケに手を突っ込んで歩くサスケくんはダルそう。
「おうおうおう!おっせー、おっせー、おっせーってばよ!サスケェェェ!!」
アカデミーの校門前で仁王立ちするのは、独特な喋り方が特徴のナルト君で。
「え、はや。なんでいるのよ、ナルトが」サクラちゃんが「うっ」とイヤそうな顔をしたが、当の本人はお構いなしだ。
「だぁっは、はっは!今日こそは!ゼッテェ勝つってばよぉぉーー!!」
ビシーッとサスケを指さす!
「は?」冷めた表情なのはサスケくんで。まあ冷え冷えで。
今日はなに勝負するのだろうか。じつはサスケ君の修行時間は、必ずナルト君もいるのだ。そう毎日。
2人の修行相手にわたしは毎日付き合っている。暇じゃないんだよ?
カカシの休みは、たまに変わってくれる。でも修行が鬼過ぎてナルトくんは速攻で帰ってしまうが……。
「ねーねー、サスケ君は、もう宿題終わったぁ??」
「あ!!やってないってばよ!」
「もーー、ナルトに聞いてないー」
サスケ君を真ん中にして、ナルト君、サクラちゃんが並んで歩いて校門をくぐって、アカデミーに歩いていく。
その背中姿を見て
私は微笑んだ。
カカシと歩く
リンとオビトのように少し見えた。
ガイはそのとなりを歩いて、アスマや紅もいて……。
私は家が遠かったから、いつもギリギリで。みんなの姿を見つけて、慌てて追いかけて……。
ひとりだった。
でも仲間がいた。
……きっと大丈夫。サスケ君は大変な道のりかもしれない。でもきっと仲間がいれば。
だれかが、ずっとそばに
いてくれたら……
「花奏、行かねーのか?」
くるりと振り返ったサスケくん。ナルトくんも「早く来いってばよーー」と手を大きくふっている。
「ごめんごめん、いくいくー!」
私は微笑んで
みんなのそばに駆け寄った。