第29章 始まり
「カカシ?」
カカシは日が暮れる運動場を、アカデミーの教室からぼんやり眺めていた。
「ああ、花奏」
一連の騒動の報告を3代目ヒルゼン様に終えた私たち。ちょっとごめんと、トイレに行って私が戻れば、カカシが窓から黄昏ていた。
「どうしたの?ぼんやりしちゃって」
「うん、ちょっとね」
カカシと同じ方角を見つめた。ちょうど子供たちが下校している。チャイムとともに笑い合って帰る子供たち。足早に帰路に向かう子供たち。サスケ君も今日は疲れたのかすでに下校している。
「……羨ましいね。オレは授業をほとんど受けれなかったからね」
「うん。そんな時代だったからね」
カカシはアカデミーを首席で5歳で卒業した。大戦中だから、ほとんど授業は受けていない。私だってそうだ。紅もガイもアスマも。早く卒業して各自で自主学習を励んだ。毎日学校なんて行っていない。たまに臨時学習があるぐらい。使える人材は若くても戦場に次々と送られた時代だ。
今日、子供たちの様子を、アスマや紅、ガイは、どんな思いで眺めていたのだろうか。
羨ましいって
思っただろう。
立派な忍に……。
そう願ったはずだ。
「カカシ、私ね、4月からの特別授業がちょっと楽しみなんだ。久しぶりにアカデミーに戻って来て楽しかったからね」
私はクラスメイトを浮かべる。ナルトやサスケくん。シカマルやチョウジ。みんな名家ばかり。大変だけど楽しそう。将来有望な人材ばかり
カカシは私の言葉に
軽く肩を弾いた。
「花奏センセ、頑張って。期待してるから」
「うん」
なんだか、こそばい。
笑みが漏れた。
「カカシは身体しっかり休ませてよ。それからお仕事がんばること。無理しちゃダメだからね」
「あーハイハイ」
本当だろうか。
カカシはすぐに無茶しちゃうのだ。
「あー、さー帰ってご飯作ろうかな。なに食べたい?あ、サスケ君のも作らなきゃなー」
うーん、と背伸びして、踵を返して廊下に歩き出した。カカシも並んで歩いた。
「んー、茄子の味噌汁とサンマの塩焼き」
「はは、了解」