第29章 始まり
イルカ先生は「あ、はい!」とすぐに恐縮そうに返事を交わした。
「すまなかった。授業中に恐い思いをさせてしまい」とカカシは頭を軽く下げて詫びた。無傷でよかったと安堵を浮かべた。
「い、いえ!皆さんのおかげで助かりました。お怪我がなくよかった。あ、みんな集まりなさい」
イルカ先生の号令に子供達が駆け足で近寄り「ありがとうございました!」と礼を大きな声で伝えた。
カカシは元気いっぱいの小さな生徒たちを、優しい表情で見渡した。
「イルカ先生、少しだけいい。子供たちと話をしてもいいか?」
「はい!もちろん」
イルカ先生はすぐ頷く。子供たちは隣同士で顔を見合わせる。なんで暗部がオレたちに話なんかあるんだ?そう聞こえてきた。
ざわざわ、喧騒のなか、カカシは近寄り前に屈んで、視線を子供たちと同じ目線に合わせた。
それは暗部ではない。
まるで先生のように。
「今日は危ない目に合わせてすまなかった。ま、あと5年もたてばアカデミーは卒業で、もっと大変だ。今後どうやって学問や技術を身につけるかは自分次第。イルカ先生の授業をしっかり聞いて学ぶようにな」
「「はい!!」」
揃う生徒の声が校庭に響いた。カカシは優しく目尻を下げた。元気でよろしい。そう言うように。
「ま、それと……」
カカシは付け加え、ついでに1番前で三角座りをして、ちょうどケンカ中のふたり、ナルト君の頭とサスケ君の頭を軽くなでた。
「……友だちは大切にしろよ」