第29章 始まり
「花奏……」
背中から発した声に私は我に返った。目線を逸らせば、生徒たちがコチラを見つめていた。
生徒たちの表情は唖然としている。それはそうだろう。7歳の変幻を解いた私の姿を、子供たちは初めて見ているのだから。
「……」
正体はもうバレている。私は生徒の輪の方へ足早に向かった。
騙してごめんね。
そう伝えるために。
ナルト君やシカマルや、みんなが目線をそらさず、近づく私を見つめる。
7歳ではない暗部に
身をまとう私を。
「…ご、ごめんね」
息を静かに吐いた。
苦笑いがこみ上げていた。
それから
ポンッと煙と共に
7歳の偽りの姿に私は変幻した。
「黙ってて……じつは」
そう伝えようと唇を動かした瞬間だ。強風のように大きな声が遮った。
「花奏ってば、すんげぇぇぇーーーーーってばよ!!」
ギンギラ目を光らせたナルトくんは私の両肩を強く掴む。
「え、ええ、!?え」
「なぁ、なあなあなあ!」
ひっ、と思わず私の声が漏れる。背中から紅やアスマの吹き出した笑い声が聞こえた。
「じゃぁさ!じゃあさ!じゃあ!!花奏ってば、変幻も術も体術も使えちゃうの?!えーーもしかして、オレの次に天才じゃねーの!?すっげーっ!やるじゃん!」
がくがく揺れる私の両肩。ああ、ナルト君は最後までナルトくんだ。