第29章 始まり
「……さて、だいたい片付いたか」
カカシは踵を返す。向かった先は、サスケ君のいる場所だ。うずくまる肩を叩いた。
「サスケ恐かったろ。大丈夫か?」
「……び、ビビってねーよ」
立ち上がりカカシを見上げる
瞳は光がさす。
「サスケ君、大丈夫?」
私がサスケ君のそばに近寄ると、「ああ」とぶっきらぼうにいって歩き出す。イルカ先生のもとへ駆け足でむかった。
「……可愛くないねー。まったく」
「カカシ、そんなこと言わないの」
走るサスケ君の後ろを
白猫が追いかけてゆく。
不思議な猫だ。
サスケ君の足が止まり、こちらをギラリと睨んだ。
「……次、敵が来たら
いっさい手を出すな」
カチンときたのか、カカシはなんか言いたげだ。半眼だけど、ゆっくり顔を緩めた。
「……あーはいはい」
サスケ君は唇を噛む。白猫が後ろにいる事にも気にもとめず、イルカ先生やアカデミーの子ども達が集う輪の方へ走っていった。
輪の中に入ると、サスケ君を心配する子供達の声が響いた。この黄金クラスは、仲間に恵まれている。
友達がいる。仲間がいる。
それだけで百人力だ。
カカシはサスケやクラスの子供達を目を優しい表情で見つめていた。
「将来が楽しみだよ」
「ふふ、本当だね」
カカシは何故か嬉しそう。その姿が、まるで先生のようだ。不思議と安易に想像ができた。
「カカシ隊長。こちら側の任務、全て完了しました」
カカシのまわりに、音を立てずに膝を下ろした仲間が囲むように集まる。いつものように獣面を付けたまま。
「事後処理を行います。カカシ隊長、拷問部へ運びますね」
「ああ、助かる。コイツらの情報、絞れるだけ絞り取るように。抜かるなよ」
「は」
指示を受けた暗部ろ班部隊達は、手際よく捕まえた敵を肩に担いで運び出してゆく。時間は、さほどかからない。あっという間だ。
猫面を外したテンゾウは部下に指示を出しながら
グランドを見渡す。
「さすがセンパイ方ですね。アカデミー屈指の黄金クラスメンバーと謳われただけある。少人数で片付けてしまうとは…」