第29章 始まり

台風みたいな豪風が
グランドに舞う。

「ダイナミック•エントリー！！」

猛烈な飛び蹴りで
敵が吹っ飛ぶ。

「ぐぉ…！！」

樹木に激突した。豪音と同時に
大木が激しく揺れ動く。


「いつ、の間に…ぐっ」

敵は呻き声で
のたうち回った。


「ハハハハ！バカめ！」

歯を光らせて仁王立ち姿。

「カカシ遅いぞ！花奏！怪我はないか！」

全身緑色タイツで身を固める。
髪型はオカッパ頭。

得意の体術は
だれにも負けない。

「ガイ……ありがとう」

安堵した私が顔を緩めた
一瞬だ。

応戦中の敵３人が
サスケ君に方向転換して駆ける。
よそ見した自分が悪い！

しまった！


「邪魔だ！どけ！」

サスケ君の前に
ひとりの長身男性が立っていた。

敵の行手を遮るのは
暗部ろ班隊長。


「はい、残念」

飛び蹴りではなく、回し蹴り。
裏拳も炸裂する。

よけた敵を背負い込み
地面に叩き落とした。

背中を激しく打つ
地響きが鳴る。

「ぐっ……お前は」

激痛で顔を歪ます敵は
目を丸くする。

「…写輪眼はたけカカシ…」

唇が震えた。

「んー全然力が戻ってないな。明日から筋トレ増やすか……」

カカシは自分の手を
グーパーして肩を落とす。

「ーで、なんだっけ？」

「……てめぇ！」

敵が怒り狂って拳を振り出す。
目線を合わさない。

男のレバーだ。
長い脚を使い
思いっきり蹴り上げた。

みぞおち、に炸裂する。

「なーに勝手に立ってんの」

敵の口から唾液が飛び出す。
カカシは、かかと落としで
トドメをさした。

「許可出してないでしょ」

地面に伏した敵が猛烈な激痛に背中を丸める。苦悶する声色がうごめく。

「カカシ、
どちらが多く倒せるか勝負だ」

キラリと輝く白い歯に
カカシはゲンナリ顔だ。

「あのねー、ちょっと前まで瀕死だったのよ。無理に決まってんでしょ」

「なに！？この腰抜け野朗め」

カカシは、「はぁ……いつも元気ねーガイは」と喋り、私の前に立った。


「花奏無事か？悪い。遅れた」

「ううん。カカシありがと」

……松葉杖がない。
見上げた長身の銀髪は
風でサラサラと揺れる。

「……身体は大丈夫？」

小声で話す私に
目を優しく細めて一瞥した。

「ま、大丈夫でしょ。多少動いても」