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【NARUTO】柔らかな月を見上げて

第29章 始まり


「……!花奏……!」

かすれた声が
背中に小さく届いた。

「ぜったい私から離れないで。大丈夫だから、ね?」

根に襲われかけた日と同じように
優しく伝えても意味がない。

私が一瞥するサスケ君は
顔面蒼白で震える。

腰に力が入らずに
立てない状態だ。

真っ青で全身に脂汗がにじみ
硬直するのだ。

……無理もない。

うちは事件から月日は浅い。
フラッシュバックを発症した
可能性もある。

困惑する私の視線を
白いモノが素早く駆け抜けた。


「ニャァ!」

樹木にいた白猫が飛びこむ。
そのまま、
サスケ君の真ん前で身をていした。

目を見開いたのは
サスケ君だ。

「な、なんでくるんだよ!」

猫の胴体をわし掴む。

小さな手で自分の胸に
ネコを抱え込んだ。

「ジッとしてろよ…」

華奢な肩は小刻みに震える。白猫は敵を凝視する。瞳孔は開いたまま。牙をむけたまま。




「そのガキだ。素直に渡してもらおう」

冷酷で低い声が空を切る。切っ先がサスケ君を指し、ふたりを取り囲んだ。

「……!くっ……」

呼吸が浅い。緊迫する鼓動。
震える足もと。


……落ちついて私。焦る前に考えなきゃ。なにが大事か。なにが最善策か。

カカシなら
冷静沈着に考えるはずだ。

リーダーらしき男へ
視線を送った。

「……なぜ、この子を狙うの?」

囲む黒い集団は、ダンゾウ様直属組織
「根」じゃない。

鋭い刃を構える男達は、漆黒の頭巾をかぶり、全身を黒で固める。額当てには霧隠れのマーク。横一文字の刻印。

つまり。

「抜け忍がなぜ……サスケ君を」


首謀者だろう。私の正面で間合いを取る男が、ぴくりと眉間を動かす。構えた刀を向けたまま口元を歪ました。

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