第29章 始まり
「………ナルトは……休みか?いや、休みの連絡は来てないがなぁ……」
ポリポリ、イルカ先生はひたいをかいた。「じゃー、次、花奏ー」
私の名前だ。「ハイ!」と声を出したときだ。
ダダダダダダダダッと猛スピードで廊下をかけ走る音が遠くから響く。その音はどんどん大きくなる。
焦る足音がドアまで近づくと、扉が勢いよく開く。
「ちょっとまったぁぁぁあ!!」
ぜぇぜぇ息切れする声。金髪の後頭部が見える。汗がしたたる。顔を上げたら、手をあげて、ニカッとすきっ歯を見せて笑った。
「はいはいはいはいーー!!いる!いるいるってばよーー!!」
イルカ先生にむけて
手を何度もあげた。
ぽかーんとしたイルカ先生は
びっくりして固まったまま。
生徒はクスクスと
笑ってる。
「ふぅーー。あぶねーあぶねーギリギリセーーフだってばよー。はーよかった」
頭に手をのせる。何事もなかったように自席に進むナルトの襟もとを、イルカ先生が、ヒョイとつかんだ。
「ナーールーートーー!!ギリギリではなく遅刻だ!!バカ野朗!あとな廊下は走るな!転けたら危ないだろうが!ほら、もう席につきなさい。授業始めるぞ」
イルカ先生は、はぁぁーーとため息をはいて出席簿をとじた。黒板に文字を書いてゆく。
「……ちぇってばよ。イルカ先生のケチんぼー。ちょっとぐらいオマケしてくれてもいいじゃねーかよーー」
ナルトは、ブーブー文句を言って口をとがらす。階段を歩いて、私の隣に座ると目を輝かせる。口はしを思いっきり上げる。
「ん?花奏じゃんかよ!もう元気なのかよ!」
まるで太陽のように輝いた。