第29章 始まり
「よーし、みんな席つけよーー」
チャイムと共に、イルカ先生がドアをあける。脇には出席簿と教科書を持ち、爽やかな笑顔がそそいだ。
「はやくしろー」
生徒は席につく。真ん中の教壇に立つと、私の方に視線がむかった。
「…!!花奏さ……!!じゃなくて、花奏、体調はもう大丈夫です、いや、大丈夫だな?」
イルカ先生が私の体調を気遣う。とっても優しい。なんと心優しい。
「あ、は、はい!もう大丈夫です。ご心配おかけしました」
にゃあ、と顔を上げた白猫は再び、膝の上でうずくまる。そっと小さな頭部をなでた。
「花奏、まあ無理しないようにな。よし、みんな出席取るぞー」
イルカ先生が出席簿を開く。番号と名前を読みあげ始める。
「はーいはーい」
「うす!」
元気よく子ども達が手を伸ばして返事する。明るい日差し。元気な声。賑やかな学校の教室。
帰ってきた。
実感がやっと湧いた。
「つぎ、うずまきナルトーー」
返事はなく
静まりかえる。
「ナルト?……ん?」
イルカ先生が出席簿から顔をあげて、私のとなりの、誰も座っていない席を見つめる。
「ナルトはどうしたー?」
知らないと騒めく。みんなが私の隣席に注目する。まだナルトが登校していないようだ。