• テキストサイズ

【NARUTO】柔らかな月を見上げて

第29章 始まり


「邪魔だ。どけ」

男の子の澄んだ声だった。私が振り替える前に、キバは押されて尻もちをつく。

聞き覚えのない声。

力は使っていない。
点で押したのだ。

「ってーな!なにすんだ!」

床に座り込むキバが見上げるころには、その男の子は、歩いて教室の中央に向かう。


「通行の妨げになる。周りをよく見ろ」


長い髪をなびかせ、階段をのぼる。端に座るオカッパ頭のビクビクした女の子を見つけると、軽く会釈をして、会話を始める。



「ーーって、今のうちに」

私は混乱に乗じて教室内に入った。
情けない姿だが致し方ない。……助かった。

キバは怒り目で立ち上がる。長髪の男の子の方に向かった。

「テメェだれだよ!見慣れねー顔だな」

「痛い目に遭いたいのか」


一瞬だった。太刀打ちできない。もう一度手のひらで軽く押した。それだけなのに、今度は立ち上がれない。

ツボを押したのか。
点を突かれて、苦痛にゆがめ
脇腹を押さえた。

「安心しろ。すぐに痛みはなくなる」

騒めく教室。
サスケくんも見つめたまま。

キバが吠えても、我関せずに扉に向かう少年は私の方にむかう。

整った顔立ちに、長く艶のある黒髪。
父親によく似る。

私は知っている。
……名家だ。

柔拳を使ったのだ。
だから簡単に少年は倒れた。

日向始まって以来の天才と、父親が話していた。
有名な名門一族の……。


「……日向ネジく…ん」

呟いた瞬間、少年は、私をジッと見つめる。見つめるというより、調べる。狼狽したのは、私の方だ。


日向家は、チャクラの流れを見ることができる。つまり……



「……偵察ですか?」

私を通り過ぎる際、耳元で囁く少年は
軽く口角を上げる。

私の変幻など瞬時に見抜くのだ。

「……護衛で」

ポツリ呟く。
私の恐々の肩を叩いた。

「…身体がまだ治っていない。チャクラが不安定だ。無理なさらず任務を続けてください」

私の表情はさらに強張る。

ーーそこまで射抜くの?

振り返り見開いた私の顔を見ると、ネジは微笑し教室を出て行った。

「…ネジくん……じゃあ…また」

廊下を歩く背中を見送った。
階段をのぼる。サスケ君より1年先輩のようだ。

生かすか殺すかは……教育次第。
凄い…ひとだ。

私の表情に、
ワクワクした光がさしていた。

/ 561ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp