第29章 始まり
「おい、ウィルス性胃腸炎で久々に来て挨拶はなしかよ!」
またこのパターンか。大きな口から八重歯が光る。フード頭の上に乗る忍犬がワン!と吠えた。
「アレだ。変なモン拾い食いしたんじゃねーの?」
コレは偏見だ。差別だ。
「し、してないよ!」
フード頭の黒髪の少年は、教室の扉の柱に足裏を置いて、通せんぼうする。
……相変わらず入れない。
毎度の通例になりつつある。
なんて悪い奴なのか。
「しかもお前、なに猫なんか持ってきてんだよ。ふほーしんにゅーの次はドロボーかよ。犯罪者じゃん」
抱っこする手に力が入る。
白猫が「にゃぁ」と見上げて
可愛く鳴いた。
「だって離れて……くれないんだもん」
私の口がとがる。おりてって言っても今日は離れない。なんでだ。でも可愛いから許しちゃう。
だいたい不法侵入でもなけば
猫強奪犯でもない。
何回言えば……略。
「そんなこと言うなら!キ、キバ君の頭の上にいる、ワンちゃんはいいの?」
私の人差し指は、「ワン」と
可愛い声で吠える白い子犬を指した。
猫がダメで犬なら良いは差別だ。
ビシっと指摘した。
「あ?赤丸はいいんだよ。オレはアカデミーに認められてんだよ。苗字にもあるだろ。い・ぬ・づ・かってな。オレの家は名家なんだよ。アンダースターン?」
「くっ……」
……なーーんて腹立つ。
目下の肌がひくつく。サスケくんは案の定、教室を入るのを許可される。私は通れない。なんでだ。
なんと悪い奴なのか。信じられない。この借りは必ずどこかで…!!倍返しだ!
……なにかの見過ぎだ。
私はため息をはいた。
キバの片足は上げている。
ということは、
身体の重心は傾く。
床についた足をスラディングして打破…
してはいけない。怪我する。ここは教室内。床は硬い。
クソぅぅ……。
あーーどうすれば…!!
悩んでいた時だ。